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PRODUCTION NOTEプロダクションノート

  • 世界で勝負できる
    エンターテイメントを!LINK
  • ゴールデンカムイ』の魂”
    を追求した脚本!LINK
  • 山﨑賢人を筆頭に
    豪華キャスト陣が集結!LINK
  • キングダム』チームが集結!LINK
  • 二風谷に“コタン”を制作!LINK
  • 座長・山﨑賢人の
    頼もしい成長!LINK
  • さらなる高みを
    目指したアクション!LINK
  • 原作の完全再現を
    目指した衣装!LINK
  • 小道具ひとつひとつにも
    映画の神が宿る!LINK
  • 特殊メイクチームも大活躍!LINK

世界で勝負できるエンターテイメントを!

シリーズ累計2,700万部突破の大ベストセラー漫画『ゴールデンカムイ』(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)。2022年4月についにエンディングを迎えた原作だが、それ以前から映像化のオファーが殺到していたのは至極当然である。大ヒット映画『キングダム』シリーズなどを手がけてきた制作プロダクション・クレデウスの松橋真三プロデューサー(以下松橋P)も、原作を深く愛する者の1人だった。「原作が大好きだというのはもちろんですが、自分の中のテーマとして世界を舞台に勝負できるエンターテイメントを作りたいと常々思っており、その筆頭にあるのが『ゴールデンカムイ』であったのは間違いありません。ストーリーの面白さもさることながら、名作『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年)にも通ずるような深いテーマ性。加えて僕が小学校の頃に見て衝撃を受けた映画『二百三高地』(1980年)を、いつか自分の作品でも描きたいと思っていた。あの映画を見て“日本人とはどんな想いをしてここまできたのか”ということを教わり、自分の魂の根っこに先人たちが築いてきたものが脈々と受け継がれているのを、子供ながらに感じました。様々な想いがドッキングした時、必ずこの偉大な原作を映画にしたいと強く感じたのです」
そんな時、松橋Pの古巣・WOWOWの先輩である小西真人氏(当時、制作局長)から、『ゴールデンカムイ』の映像化への相談を受ける。他社との争奪戦になることは必至だったが、松橋Pは2020年、WOWOWと共に映像化権獲得へエントリー、見事に射止めることに。ほどなく配給に東宝も決まり、映画『ゴールデンカムイ』は大きく動き始めた。しかし当時は、原作は絶賛連載中。「それから約2年経って原作は完結しましたが、今思えば原作が終わらないと映画化はできなかったと思います」とWOWOWの大瀧亮プロデューサー(以下大瀧P)は回顧する。「原作には様々な伏線が巧妙にはりめぐらされているので、それを勝手に映画で回収することはできないなと。映画化が決まり、その後じっくり丁寧に準備をしていく時間が絶対に必要だったと、今改めて思うばかりです」同じくWOWOWの植田春菜プロデューサー(以下植田P)も「原作の野田先生とも内容についてなど繊細なやり取りをさせて頂けたことも、非常に大きかったです」

ゴールデンカムイ』の魂”を追求した脚本!

壮大なスケールの物語を手がけたのは『キングダム』シリーズを筆頭に、ドラマから劇場版まですべてを手がけた『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、2022年の興行収入No.1を記録した『ONE PIECE FILM RED』などの人気脚本家・黒岩勉。松橋Pとは長らく仕事を共にしてきた黒岩と、WOWOWサイドも初タッグを強く望んでいたという。「『ゴールデンカムイ』の魅力のひとつは、個性豊かなキャラクターがたくさん登場する群像劇であるという面。ですが今回に関しては、そのキャラクター達をしっかり描きつつも、杉元とアシㇼパの2人の物語を軸ににしようと黒岩さんと話しました。映画のクライマックスを最大限盛り上げながら、杉元の心の変化をきっちり描くことが、物語に深みを与えることになるという確信があったんです。難しかったのは原作のいわゆる“コメディパート”部分。漫画では自分の好きなタイミングでページをめくることができるので、シリアスな表現からいきなり笑いの表現にいくことも可能ですが、実写ではそうはいきません。観客の中に共通して同じ時間が流れるのが実写化ですから、シリアスとコミカルにはしっかりと緩急をつけて分けて描いてもらうことは大事だったと思います。あとは熱烈な原作ファンの方々も満足してもらえるよう、物語を大きく端折らないという事も心掛けました。。そして、最も大事なのは“『ゴールデンカムイ』の魂とはなんぞや?”ということ。その意識は、脚本はもちろん、全スタッフの中にあったものです」(松橋P)
原作に忠実に、原作へのリスペクトを何よりも大切に、黒岩の脚本は丁寧に紡がれた。「率直に申し上げて、脚本の精度の高さには驚かされました。最初にあがってきたものがすでに抜群に面白く、原作の欲しいエピソードがしっかりと網羅されていて素晴らしかった。ただひとつ黒岩さんにお願いしたのは、杉元とアシㇼパ以外のキャラクターたちも、それぞれの登場ポイントで最も魅力的に見えるようにしてほしいということです。原作ファンは強い愛情を持ってキャラクターを見るだろうし、全員がある意味で主役になり得る要素を持っているのがこの作品。逆にこの映画で初めて『ゴールデンカムイ』の世界に触れる人がいたとしても、映画を見終わった後に漫画を読みたくなるような展開を目指しました」(大瀧P)。
「脚本作りにおいては、いかにキャラクターたちを魅力的に輝かせるかに注力するという決断は正しかったのだと、原作の1ファンとしても思っています」(植田P)。

山﨑賢人を筆頭に豪華キャスト陣が集結!

主人公“不死身の杉元”こと杉元佐一を演じるのは、山﨑賢人。『キングダム』シリーズに続き、超人気漫画の実写化の主人公を演じることに「相当の覚悟を持って臨んでくれた」と松橋P。「山﨑さんは長らく一緒に仕事をしているパートナーなので、彼の誰をも魅了する人柄、役に対する真摯な姿勢は十分知っていました。これほど大きな作品を主演として背負ってくれる方は、なかなかいない。近年の彼の活躍は凄まじいものがあります。「今際の国のアリス」シリーズ(Netflixドラマ)の世界的大ヒットもあり、世界中の人が山﨑賢人に注目していることを、個人的にはもっと知られるべきだと思っています」
山﨑自身、原作を読み「杉元を演じたい」という想いを強くしたというが、同時に再び人気漫画の主人公に扮することに葛藤もあったと思うと松橋P。「ただ純粋に面白いことにチャレンジしたい、やり遂げたいという意志や好奇心の方が、ネガティブな想いより勝ったんだと思います。『キングダム』の信で既に体は鍛えられていましたが、今回はさらに筋肉だけで約10㎏増量し、杉元としての肉体を作り上げてきた。否定的な意見をひっくり返そうとしてくれていることに感動しました。彼に細身のイメージを持っていらっしゃる方もいるかもしれないけど、それは10年前の話。今は全然細くはないですよ」(松橋P)。
杉元と行動をともにすることになるアイヌの少女・アシㇼパは、様々な作品でメキメキと頭角を現しつつある新進女優・山田杏奈を、オーディションで選出。「アシㇼパは杉元に並ぶ重要なキャラクター。原作では少女の姿ですし、明確には描かれてはいませんがおそらく年齢設定も幼い。いろいろな議論はありましたが、お芝居が確かなことと、山﨑さん同様覚悟を持って臨んでくれる方というのが決め手でした」(大瀧P)。「山田さんとは以前別の作品でご一緒したのですが、現場での居方に感銘を受けました。すごく周りを見てらっしゃるし、実際の年齢よりはるかに大人。もちろんビジュアルがアシㇼパに似ていることも大きかったです」(植田P)。「目の強さもまさにアシㇼパでしたね。山田さんはこれまで薄幸で影のある役が多かったのですが、笑うと屈託なくかわいらしい感じもあるので、そこもアシㇼパと重なりました」(クレデウス・里吉優也プロデューサー/以下里吉P)。山田の起用には『キングダム』当初の吉沢亮の姿が想起されるとも、松橋Pは言う。「第一弾公開当時は、吉沢さんは今ほどのスターではありませんでした。ですが今は彼を知らない人はいない。山田さんもこの作品でスター俳優になってくれるであろうと期待しています」
脇キャラ不在の『ゴールデンカムイ』にふさわしく、他の人気キャラクターにも豪華俳優陣が揃う。「でも最初から豪華な方々にお願いしようと意識していたわけではありません。これだけの方が揃ってくれたのは、あくまで結果論。役に一番はまる方を適材適所で探していった結果、原作の力もあって素晴らしい方々が集まってくれたということだと思います」(松橋P)。凄腕スナイパー・尾形百之助には、身体能力の高さとストイックさには定評のある眞栄田郷敦、“脱獄王”=白石由竹を演じる矢本悠馬は、自身が白石の大ファンでもあり、大幅な肉体改造を敢行して役に挑んだ。強烈なビジュアルと個性で熱狂的な人気を獲得している鶴見篤四郎には、玉木宏。玉木に関しては原作者・野田氏から「鶴見には玉木さんがピッタリだと思います」という熱烈オファーもあり実現した。キャスト解禁時、玉木と共に“Wひろし”としてトレンドを賑わせたのが、土方歳三役の舘ひろし。撮影初日の土方の登場シーンの凄みある立ち姿にスタッフ一同鳥肌が立ったという。威風堂々とした佇まいでオンリーワンの土方をスクリーンに蘇らせている。
鶴見の側近・月島基には工藤阿須加、エキセントリックな双子の軍人・二階堂浩平&洋平には栁俊太郎(一人二役)、“谷垣ニシパ”として原作ファンの間で親しまれる谷垣源次郎には大谷亮平、額に大きな特徴がある“不敗の牛山”こと牛山辰馬には勝矢、土方と行動を共にする元新撰組二番隊隊長・永倉新八に木場勝己、杉元の幼なじみ・梅子に高畑充希、同じく幼なじみの寅次に泉澤祐希、アシㇼパの心優しい祖母・フチに大方斐紗子、杉元に金塊の存在を教える囚人・後藤竹千代にマキタスポーツ、アシㇼパの大叔父役にはアイヌ民族の血を引く秋辺デボ。「全員が原作と役へのリスペクトが凄まじく、ビジュアルも原作に限りなく近いものを作り上げてくれました」(大瀧P)。

キングダム』チームが集結!

本作の陣頭指揮を執ることになったのは、久保茂昭監督。『HiGH&LOW』シリーズをはじめ、500本以上の有名アーティストのMVを手がけ、「VMAJ 年間最優秀ビデオ賞」を5年連続受賞するなど華々しい経歴を持つ久保監督は、実は原作の熱狂的なファンでもある。映画『小説の神様』(2020年)などで監督と仕事をしたことがあった松橋Pは、「久保さんは派手なアクションで注目されがちですが、人間ドラマもしっかり撮れる監督です」とキッパリ。「今回はその両方が必要でした。久保さんが得意なアクションと、熱い人間ドラマ。画もリッチですし華やかなものを作ることにはもともと長けている方なので、是非にとお願いさせてもらいました」
監督はオファーを快諾しつつも、「どこまでのあの世界観を映像化できるのだろうかという不安もありました」と原作ファンならではの正直な想いも吐露。「ただ脚本を読んで、ここまで丁寧にしっかりと描いていくんだという、プロデューサー陣の強い意志と覚悟を感じたんです。スタッフの皆さんと最初にお会いした時に“偉大な原作リスペクト映画にしたい”ということを、熱すぎるほどの熱量で語らせていただきました。この原作の魅力って金塊争奪戦の面白さや、個性的なキャラクターたちというのはもちろんあると思います。でも僕が一番惹かれるのは、アイヌ民族の生きた北海道の大地で、彼らの文化を感じながら冒険の旅をしていくことなんです。この原作を読んで初めて知るアイヌの文化もたくさんありましたし、アシㇼパを通して感じるカムイ(=神)の存在、強く生きていくということの本当の意味。杉元とアシㇼパと旅をしながら、アイヌ文化を自分の中でかみ砕いて消化できることに最も魅力を感じました」
久保監督を支える制作スタッフ陣には、『キングダム』チームが集結! 制作プロダクション・CREDEUSをはじめ、前述した脚本=黒岩勉、音楽=やまだ豊(『キングダム』シリーズ、Netflixドラマ「今際の国のアリス」シリーズ、『東京リベンジャーズ』)、アクション監督=下村勇二、衣装デザイン=宮本まさ江、VFXスーパーバイザー=小坂一順など各分野の最強スペシャリストが再び揃う。また本作の大切な要素となるアイヌ文化を繊細に妥協なく描くため、『ゴールデンカムイ』の原作&TVアニメーションシリーズでもアイヌ語監修を行った千葉大学名誉教授・中川裕と、役者としても出演する秋辺デボがアイヌ語・文化監修を行っている。

二風谷に“コタン”を制作!

撮影は2022年末から2023年春まで、北海道を中心に行われた。作品の性質上、雪がある真冬のロケは必須事項だったが、予想を超えた過酷な撮影の日々が久保組を待ち受ける。それでも「北海道の物語である『ゴールデンカムイ』を、北海道で撮れる喜びは毎日感じていました」と久保監督は言い切る。「正直予算的なことを考えると、関東からもう少し近場の積雪地帯でまとめて撮った方がいいのでは?という話も最初はありました。でも僕も美術部スタッフも、絶対にこの作品は北海道で撮るべきだと思っていた。森と雪があればどこで撮っても同じだろうと思われるかもしれませんが、実際見ると全然違うんです。山ひとつとっても、同じ場所で別のシーンは撮れないと感じました。そのシーンの風景はそのシーンでしか成立しないので、同じ場所でカメラ位置を切り替えて違うシーンを撮ったとしても説得力が全くなくなるのです」美術部はロケハンの際、まずそこに生えている樹木を真っ先にチェックしていたとも言う。気温が低く雪があるところにしか生息しない北海道の固有種・エゾ松を探し求め、北海道に生息しない木々が1本でもあるロケ地は即撮影NGとする徹底ぶり。雪質さえも「北海道の雪は全く違った」と言うが、雪ロケの洗礼はしっかり受けることに。「撮影を始める前にまず膨大な敷地を圧雪しないといけないんです。それをしないと雪が沈んでしまって、撮影どころではなくなってしまいますから」(久保監督)
美術部の磯見俊裕もこの圧雪作業には驚いたという。「制作スタッフも含め、全員で毎日圧雪をやらなければいけないのが、こんなに大変だとは思わなかったです。雪の状況次第では全く撮影ができなくなるし、かといっていかにも圧雪したように見せてもいけない」加えて近年の雪不足の影響もあり、「まさか北海道に来てまで雪まきをするとは思わなかった」と苦笑い。「年が明けて2月3月となるとどんどん雪が溶けてきてしまって。結果260トンの雪を運び込み、スタッフ総出で雪をまきました」
アシㇼパが暮らすアイヌのコタン(集落)を、現在もアイヌ文化を色濃く残す二風谷に作れたことも、監督にとっては最大の喜びだったと語る。「最初からコタンはアイヌ文化が残る地に作りたい思っていました。ただコタンの屋根の萱ひとつ集めるのも非常に大変で。2022年の夏にはコタンは完成していましたが、そのためには春先から萱を予約しなければいけない。あの量の萱を集めるのは相当大変なことだったと思うし、完成してからも冬の雪の中でコタンを慣らす時間が必要でした」(久保監督)美術部としてもコタン制作には並々ならぬ想いがある。「今回のお話をいただいて、コタンのあり方にはとても興味を持ちました。アイヌの生活や建築については美術部全員で調べ尽くし、実際に北海道に行って(秋辺)デボさんはじめ、いろんな方にお話を聞きながら作業を進めていきました。チセ(アイヌの家)の制作には、北海道にあるタモや柳もたくさん使っていますが、その地域地域の近場にある材料で建築をしたり道具を作っていくというのも重要で。建築の指導者がいる地域には、必ず技術者の方もいらっしゃる。二風谷は本当のアイヌの地で、すぐ近くの河原には集落があったような土地なので、ここにコタンを作らせてもらうように美術部としても強くお願いしました」(磯見)チセ制作には、当時のアイヌ民族と同様の手法がとられている。「釘を使わず桁丸太に受けの“ほぞ穴”を掘り、そこに屋根の構造となる三脚に組んだ丸太を差し込んで“合掌造り”にし、それをぶどうづるとシナノキの皮の繊維で作った縄で縛って固めていく。チセはすべてその方法で制作しています」
“オハウ(汁物)”や“チタタㇷ゚(肉や魚のたたき)”など原作に登場するアイヌ料理も『ゴールデンカムイ』には欠かせない。アイヌ民族料理研究家の三神直美監修のもと、映画の中では忠実に再現されている。「我々が刻むもの」という意味の“チタタㇷ゚”を作るシーンでは、アイヌ語・文化監修の秋辺デボが、刃の角度や叩く速度などを細やかに指導しながら撮影が行われた。

座長・山﨑賢人の頼もしい成長!

監督、スタッフの強いこだわりは役者にも伝播し、極寒の北海道で役者陣も躍動する。チームを引っ張っていたのは、やはり座長・山﨑賢人。「『キングダム』からずっと彼を見させてもらっていますが、確実に座長として成長しています。自分から声を上げて周りを引っ張っていくタイプの人ではないですが、隅々まで気を配って全員がそこにいやすい環境を作るタイプの主演俳優だと思います」(松橋P)。「現場で何気なくポロっと言う一言で、皆が和んで笑顔になる。皆が山﨑さんを大好きになるし、癒しの力がすごくある方だなと思いました」(植田P)。しかし意外なことに撮影前半は、山﨑と山田の間には一定の距離感が保たれていたとか。「最初の方はあまり2人が仲良く見えない方がいいという思いがあり、それを山田さんには事前に伝えて、逆に山﨑さんには自然に任せてもらいました。出会いのシーンを撮影した頃は2人の間にいい緊張感がありましたが、次第に打ち解けていき、初めての“チタタㇷ゚”シーンではぐっと距離が縮まるというプランニングにしています」(久保監督)監督の本作への熱意は凄まじく、事前にメインキャストに、役についてびっしり書き込まれたノートを手渡している。「山﨑さんとは初めてのお仕事だったので、彼の魅力って何だろう?と改めて考えてみたんです。そしたら彼の演技って、見ている側がほっておけなくなる、応援したくなるなと。そこに僕はとても魅力を感じたので、本人にも伝えました。杉元は強靭な肉体と精神を持っているけど、どこか人間臭いアンバランスな感情も持っているはず。それが山﨑さんのお芝居を見ていて、スッと僕の中で落ちた瞬間でした。加えて新たに発見したのは、山﨑さんの“静”の芝居のナチュラルさ。動いてエネルギーが出るタイプの俳優さんだと思っていたのですが、すごく佇まいが自然な方なので、ファーストテイクが抜群にいい。本人も言っていたけど、2テイク目は余計なことを考えてしまうからファーストテイクが一番好きらしいです。今回の杉元はアシㇼパといろいろな初めての冒険をしていくので、そこもすごく合っていたと思う。見ている僕らにも杉元の初めてを体感させてくれるし、感情移入させてくれるんです」
一方の山田に関しては、「あの瞳を見た時に、彼女ならアシㇼパがやれる」と直感したとも。「何かを背負った目をやらせたら、今ピカイチの俳優さんだと思います。それくらい目に説得力があった。逆にコミカルなシーンは山田さんもあまりやったことがなかったので、どこまで変顔ができるのかなどはかなり話し合いました。原作のアシㇼパの変顔を20枚くらい集めて、“これを全部やってもらうからね”と(笑)。でも山﨑さんがコメディの経験値が高かったので、いい具合に彼女を引っ張ってくれたと思います」
撮影後半はすっかり仲良くなった2人の姿が何度も見られたが、北海道の寒さは最後まで手を緩めることはない。後述するアクションシーン以外で、今回最も杉元が体を張ったシーンのひとつが、真冬の川へのリアルなダイブ! もちろん白石役の矢本も、山﨑に負けず劣らず体を張りまくっている。「僕らはいくら寒いといってもしっかり防寒していますが、役者さんたちは基本衣装だけ。矢本さんに至っては気温−8℃の雪の中でふんどし一丁になるシーンもあって、本当に大変だったと思います。川に飛び込むシーンは山﨑さんと矢本さんが、“自分たちでやりたい”と言ってくれたので、最大限ケアをしながら無事撮影ができてホッとしています」(久保監督)実はこの川のシーンは2月だったのだが、「見事なまでに、すべての川が凍っていました」と美術部・磯見は振り返る。「でも流れている川に飛び込んでもらわないといけなかったので、撮影の10日ほど前に重機を入れて川の氷を割って。それでも割り切れないところは、ツルハシを使って手作業で割って……。でも翌日にはもう凍っているからそれを撮影まで毎日繰り返していましたね。あの作業は結構予想外で、水の中を歩いているとズボンにもツララができたりして“さすが北海道!”と思いました(笑)」ちなみに山﨑と矢本は衣装の中にドライスーツを仕込んでいたものの、当然ながら真冬の川は身を切るような冷たさだったらしく、撮影後口々に「これはやばい!」とガタガタ震えながら(少し楽し気に)言い合っていた。

さらなる高みを目指したアクション!

『キングダム』シリーズで充分過ぎるアクションの経験値を積んできた山﨑だが、本作のアクションにはさらなるハードルが。『キングダム』の信と違い、杉元は(元)軍人であるため軍事所作のレクチャーを1から受けることになった。「今回のアクション監督は、『キングダム』で山﨑さんとはずっと一緒にやってきている下村勇二さん。2人の信頼関係は強く、もはやあうんの呼吸です。ですが今回は軍人特有の動きを作るために、元陸上自衛隊のガンアクションスーパーバイザーの武藤竜馬さん(『今際の国のアリス2』、映画『リボルバー・リリー』(2023年)にも参加してもらい、指導をしていただきました。更に山﨑さんは自ら歩兵銃のレプリカを購入して体に馴染むまで訓練していました。」(松橋P)。松橋P念願の二〇三高地での激戦シーンは、山﨑はもちろん久保監督も相当の熱量で撮影に臨んだ。「あのシーンで“今回の山﨑賢人は一味違うぞ”ということが、証明できると思いました。僕らも役者も本気だということを観客に分からせて、かつ魅了しなければならないと思っていたので、特にこだわったシーンです。二〇三高地だけで10日以上撮影しましたし、兵士役のエキストラも最大限集めています。“やりすぎです”とプロデューサー陣に怒られるほどでしたが(笑)、戦場の臨場感と杉元の生きざまを伝えなければと思い、必死で撮影しました」(久保監督)キャストのみならず、エキストラにも軍事監修者指導の元、アクション練習を行い、細かな動きにまでこだわり撮影、臨場感あふれるシーンが実現した。「俺は不死身の杉元だ!!」という原作でも有名な鬼神のような絶叫ゼリフも、山﨑が納得いくまで何度もリテイクを繰り返したという。これまで大勢の人間を殺してきた杉元ゆえ、アクションにもリアルな痛みが宿っていること、魅せるアクションではなく生々しいアクションであるということも重要だった。「今回はあえてほぼワイヤーは使わず、リアリティを重視しています。『キングダム』との比較で言うと、信は高い身体能力を持ち自己流で学んでいった人間ですが、杉元は軍の訓練を受け実際に戦争を経験している。その中での戦いだし、戦う相手も軍人たちなのでアクションも根本的に違っています」(松橋P)。「ひょうひょうとやっているように見えるかもしれませんが、山﨑さんのものすごい身体能力がないとやれないようなシーンばかりでした」(大瀧P)。山﨑いわく「人生で初めて雪の中、馬ゾリに引きずられました」という危険を伴うシーンも、スタントなしでトライ。「実際に引きずられているところから(ソリの上に)登っていくというのもリアルに感じられて、衝撃的でした。でも今まで下村さんと築いてきた信頼関係もあって、そういったシーンも自分でやれるというのが嬉しかったです」
身体能力の高さには山﨑同様定評のある眞栄田も、そのキレのある動きでスタッフを驚かせる。「初めてお会いしたのがアクション練習の日だったのですが、その時点でアクション、銃の扱い方からほぼ完璧でした。撮影中は尾形の銃(三十年式歩兵銃)を身体の一部であるかのように扱えるようにと、常に触れていて、本当にストイックだなと思いましたね」(久保監督)杉元VS尾形の銃剣バトルシーンは、2人のアクション魂が爆発! 心地いい緊張感の中ピッタリと息の合った動きは迫力満点で、前半の見せ場のひとつとなっている。
またアクションに関してはほぼ経験のなかった山田だが、本作のために基礎から猛特訓。「アシㇼパは小さい頃から野山を駆け回っていたアイヌの少女ですから、その説得力はどうしてもほしかった。走り方、走って止まる動き、弓を射る所作……すべてが様になっていないといけない。最初こそぎこちなかったですが彼女はとても努力家なので、撮影が始まる頃には自分のものにしてくれていました」(久保監督)。

原作の完全再現を目指した衣装!

キャラクターに寄り添う衣装を担当したのは、『キングダム』シリーズ他、今や日本映画界になくてはならない存在の宮本まさ江。もともと明治時代を描いた作品が好きだったという宮本は、アイヌについて知識を深めれば深めるほど「アイヌは地域によって、文様も全然違う」ことに驚いたと言う。「やっぱり北海道って広いんだなと改めて思いましたし、アイヌ文化の深さも同時に感じました。そして今回は原作に忠実にというのが大前提としてありました。」原作ファンが最も気になるであろうアシㇼパの衣装は、もちろんすべて手作り。複雑かつ美しい文様が鮮烈に印象に残るアシㇼパの“マタンプシ”(幅の広い鉢巻)や、“テクンペ”(手甲)は、アイヌ工芸家の関根真紀さんに依頼してすべて手縫いで刺繍を施してもらい、一年をかけて、一点もののアシㇼパの衣裳が完成した。

「杉元がコートの中に着用している着物は、原作に忠実にするため、『キングダム』でお世話になった福田織物に、色を合わせて糸から織ってもらいました。今回は原作の杉元にどれだけ近付けるかがテーマ。コートもありものだと生地がないので、色を染め直したりと何度も足し引きして山﨑さん本人の体型、ストロークに合わせたものを2回仮縫いしています」宮本は何度も山﨑と仕事をしているため、彼の体型や顔の小ささなどは熟知。一見戦場には不似合いにも思えるほど黄色いラインが鮮やかな軍帽も、なじみの帽子職人に依頼し杉元らしい形を探っていった。「史実でもあれだけ目立つ黄色だったそうですが、久保監督と話して少し黄色の色味を殺しています。最初の生地の段階で色落としをしつつ、型や幅、つばの長さを追求した後、それぞれのキャラに合う形を大量生産していった感じです」意外にも最も手がかかったのが、杉元のマフラーだったとも。「1枚の生地に全部プリントしているのですが、最後の最後までチェック柄のバランスに悩みました。杉元はずっとマフラーをしているので、幅や色味を考えるのが意外と大変でした。逆にアイヌの衣装は初歩のベースが分かってしまえば、文様は古い昔の資料を見てキャラクターに合わせて決めていけるんですけどね。全体的にとても大変だったけど、個人的には勉強になったし楽しかった。山﨑さんとは『キングダム』と両方で仕事をしていますが、最後は本当に杉元の顔になっていてちょっと感動しちゃいました」

小道具ひとつひとつにも映画の神が宿る!

杉元が常に持ち歩く“三十年式歩兵銃”にも、スタッフの恐るべきこだわりが詰まっている。ガンエフェクト=納富貴久男によると、「日本映画でよく見かける歩兵銃は三十八年式が多く、精巧な三十年式はほとんど登場していない」とのこと。だが本作では遊底(ボルト)を外して操作することが、ストーリー上で必要不可欠だったため、遊底はほぼ新造することに。「それにあわせて刻印も打ち直しているので、全体の仕上げ直し(リブルーイング)も主役の銃にふさわしいものになったと思います」野田氏もこの仕上がりには満足。ぱっと見ただけでは素人目には分からない差分ではあるが、映画の神は細部に宿る―。何より杉元の体の一部のようになじんでいるこの銃は、山﨑にとっても重要な小道具のひとつとなった。他、杉元がいつも装着しているベルト、背嚢なども当時の軍人のスタイルを入念に検証してスタッフが制作。「杉元のブーツも今売っているものとは全く形が違うので、その時代のパーツと縫い方ですべて発注してオーダーメイドで精巧に作っています」(小道具助手/奥山桃花)アシㇼパが普段から腰に付けている“マキリ”(小刀)と、“タシロ”(山刀)は、アイヌ工芸家・貝澤守さんが原作のイメージに合わせて一から制作。それ以外もアイヌの民具はすべてアイヌにルーツを持つ伝統工芸作家の方々に協力を仰ぎ、原作ファンも納得の仕上がりに。アシㇼパの装身具は常に8点ほどあったが、その中でも“ニンカリ”(耳飾り)や、レクトゥンペ(首飾り)はスタッフで制作。原作を教科書に金属パーツを発注し、すべて手縫いで作り上げた。

特殊メイクチームも大活躍!

杉元の顔に深く大胆に刻まれた傷跡、鶴見中尉の額あて&強烈なビジュアル、牛山の額に浮き出す“四角いコブ”…本作は特殊メイクチームの活躍なしでは語れない。「僕らは(ヘアメイクデザインの)酒井啓介さんが原作のキャラクターから、生身の人物に置き換えて作ってくれたイメージをもとに、監督とも相談しつつ作業を進めていきました。杉元の顔の傷で言うと、山﨑さんの顔の型を取らせてもらってそれに合わせた傷の大きさ、太さを全部調整する。その後粘土で型を作り、その型を人工皮膚を作る材料で抜き出す。そうすると山﨑さんの顔に合った傷跡が出来上がるので、それを毎日山﨑さんの顔に接着して色をつけていくということになります。現場でパテみたいなもので傷跡を盛り付けているというイメージがあるかもしれませんが、実際は出来上がったものを現場に持って行く。でもそれを作るまでにものすごく時間がかかります」(特殊メイク/中田彰輝)傷跡自体は毎回使い捨てになるため、同じものをいくつも用意することになるが、日々の杉元メイクは「左頬、右頬、口の下の3か所で、大体20分くらいで完成します」と同じく特殊メイク担当の小名清加は語る。「色味などはその都度微調整していますが、寒さで手が動かなくなったり、メイク道具も寒さで固まったりするものがあってそこは苦労しました」 本作で最もエキセントリックなビジュアルを持つ鶴見に関しては、「玉木さん以外考えられなかったです」と公言する中田。「監督も含め皆の思い入れが強いキャラでもあったので、傷跡を火傷っぽくしたり、範囲を狭めてみたりしながら3回のメイクテストをしました。3回目で全員のイメージがカチッとはまった感じがありましたね」鶴見を象徴する“額あて”については、「ホーロー製ということもあって、質感がイメージしづらかった」が、ディスカッションを重ねた結果、ピカピカした質感の一歩手前……半艶の輝きに決定。鶴見がこれまで経験してきた激しい戦いを表現するため、傷や汚れで使用感(エイジング)を出した。玉木の顔型は既に取ってあったため、“額あて”は専門の業者に頼み、本人にしっかりとフィットしたものを製作する為に玉木の顔をスキャンしたデータに合わせて3Dモデリングを行った。
完成した“額あて”には適度な隙間があり、極寒のロケ地で玉木の額が冷えすぎないよう中にスポンジを仕込むなどの配慮もされていた。牛山の額の“コブ”については「原作を見る限り鋭利にカチッと描かれているので、どうやって作ろうかは悩みました。でもその分からなさが面白かったし、自分にとっても挑戦のメイクでしたね」(中田)結果牛山のコブ状のものは、シリコン素材の伸縮性の高い人工皮膚で制作。「毎回1時間ほどかけて、あのコブを勝矢さんの額に接着して、エアブラシで色味をなじませていく作業でした」(小名)柔道の達人ならではの牛山の耳の造形も、勝矢本人の耳の型を取り、それをもとに耳のパーツを作成。撮影の度に毎回取りつけるという作業が行われた。
「酒井さんと中田さんの連携は素晴らしく、原作を相当研究して臨まれています。もちろん単に原作を再現するということだけではなく、キャスト、監督含め膨大な時間をかけてディスカッションした結果が、キャラクター造形に如実に出ていると思います」(里吉P)。

【取材・文:遠藤 薫】